Webサイトの価値を高めるために取り組むべきWebブランディング5つのポイント(5)
- ブランディング
これまでの第1回から第4回まで「Webサイトのブランド価値貢献度」を向上させるための取り組みとして「認知貢献効果」と「好感効果」、そして「ロイヤルティ効果」の3つの指標を取り上げながら話をしてきました。
今回は、4つ目の取り組みにおいて重要な指標となる「閲覧価値」について取り上げ、指標の向上のための施策について見ていきます。そして、最後に5つ目の取り組みとして「行動価値」を向上させるポイントと施策について説明します。
取り組みその4「閲覧価値」を高めるために~閲覧価値最大化のカギは「コンバージェンス(集約)」と「パーソナライズ」
下表は、トライベック・ブランド戦略研究所が行った調査「Webサイトのブランド価値貢献度」の「閲覧価値」の上位企業です。(2017年9月発表)
ちなみに「閲覧価値」とは、企業のオウンドメディア群(公式サイト・公式アカウント)において閲覧したコンテンツを基に推定閲覧者数を把握し、閲覧価値単価を設定して算出しており、以下の計算式で算出されます。(閲覧価値単価は非公開。算出方法の詳細はこちら。)
1位はユニクロでした。店舗情報、オウンドメディアでのブランド関連情報、ECサイト、キャンペーンやお楽しみコンテンツ、SNSなど、非常に幅広い範囲の情報をデジタル上で展開し、さらにそれぞれのコンテンツが相互に連携しながらユーザーのアクセス機会を相乗的に増やしています。サントリーやパナソニックも同様で、ユーザーにとって有益でニーズの高いコンテンツ提供と、オウンドメディアからSNSまでのデジタル上での幅広い情報認知機会を創出しながらユーザーとのコンタクトポイントを増やす取り組みを行っていることが特長として見られました。
「閲覧価値」は、企業にとって、より重要なページ(つまり「質的価値」)を有するページに対して、より多くのユーザーのアクセス(つまり「量的価値」)を生み出すことによって高めることができます。上位企業は、ユーザーニーズを的確に捉え購買行動において重要なコンテンツを適切な形で用意し、デジタル上の様々なユーザーとのコンタクトポイントにおいて積極的に提供することにより、良質で且つ量的にもアクセスの獲得に成功しているといえるでしょう。
「閲覧価値」を高めるための2つのポイント「コンバージェンス(集約)」と「パーソナライズ」
前述では「閲覧価値」の最大化には「質的価値:企業にとって重要なページへのアクセス」と「量的価値:ユーザーからのアクセス量」の両方を増加させることが必要であることを述べました。
「量的価値:ユーザーからのアクセス量」を増加させるための取り組みとして「チャネルコンバージェンス」が施策として意識されているかどうかがポイントとなるでしょう。企業はマーケティング活動の中で、ユーザーの購買行動を促すためにマスメディア、インターネット、リアルのあらゆるチャネルを通じて広告宣伝活動を行っています。これらの活動でのマーケティングメッセージ、コミュニケーションがデジタルを主軸として一貫性をもって企画・設計され、ユーザーからのアクセスが集約されているかが非常に重要となります。
一方で「質的価値:企業にとって重要なページへのアクセス」をいかに増加させていくかについてですが、企業にとって重要なページを生活者(ユーザー)の視点に立ってタイミングよく適切な情報をパーソナライズして提供できるかどうかがポイントとなります。せっかく量的にアクセスを増やしたとしても、オウンドメディアやSNSなどデジタル上で個々のユーザーにとって有益な情報が適切なタイミングで提供されない限り「閲覧価値」は向上しません。
デジタルマーケティングの担当者の方は自社のオウンドメディアの「閲覧価値」を高めるために、改めてデジタル、リアル全てのチャネルにおけるマーケティングコミュケーションがデジタルに集約されているか、さらにオウンドメディア、SNSなどデジタル上のユーザーとの接点においてパーソナライズされた情報提供が行えているかを見直す必要があるでしょう。
取り組みその5「行動価値」を高めるために~「リアル×デジタル」体験をUX設計し行動価値を徹底強化
下表は、トライベック・ブランド戦略研究所が行った調査「Webサイトのブランド価値貢献度」の「行動価値」の上位企業です。(2017年9月発表)
「行動価値」とは、ユーザーのサイト上での行動につながった推定人数を割り出し、行動別に設定している単価を設定して価値を算出しており、以下の計算式で算出されます。(閲覧価値単価は非公開。算出方法の詳細はこちら。)
なお、「行動価値」の算出に用いられる行動タイプは以下となります。
- 会員に登録
- メルマガ・お知らせを閲読
- ツイッター・フェイスブック・LINE・インスタグラムなどのフォロー
- 掲示板やブログ・SNS等で共有・投稿
- アプリのインストール
- キャンペーンに応募
- 資料を請求
- 見積もり・訪問を依頼
- お問い合わせ
- 店頭・ショールーム・展示場へ行った
- ソフト・ドライバー・取説・パンフをダウンロード
- 取引・契約内容の確認
- 住所変更など各種手続きや申し込み
1位はサントリーでした。「行動価値」を高めるためには、サイト上でユーザーの体験価値を高め、企業にとっての有益な成果に導くことで価値を高めていく「UX価値最大化」と「コンバージョン力強化」が求められますが、1位のサントリーをはじめ上位企業においては、ユーザーがサイト上で「何がしたいのか」を的確に捉え、行動を促す動機付けを様々なデバイス、チャネルを通じて適切に行うことができていました。
「リアル×デジタル」体験をUX設計
インターネットを取り巻く環境、技術が飛躍的に高まる中で、昔に比べユーザーもデジタル上で行動(コンバージョン)することに抵抗が少なくなってきている一方で、ユーザーを取り巻くあらゆるコンタクトポイントは複雑化を極め、企業にとって伝えるべき重要な情報やユーザーにとって求める情報が伝わりづらくなってきています。
このような状況において、ユーザーの購買行動を後押しするために欠かせないのは「良質なブランド体験」です。デジタルとリアルの間でユーザーと企業との間で望ましいコミュニケーション・UX体験を経験されることで良質なブランド体験が生まれ、その結果としてユーザーの行動が購買行動という成果に繋がるといえるでしょう。改めて、リアルとデジタルを俯瞰し、点になっているコンタクトポイントをつなぐことで、ユーザーの行動を促すためのジャーニー設計が重要となります。
「行動価値」向上取り組み事例 ユニクロ
ユニクロでは店舗外のデジタル上のコミュニケーションきっかけは、アプリが中心となります。提供するアプリの中で、ゲームや音楽、雑誌といったコンテンツを用意し、まずはゆるやかな関心でユーザーをひきつける工夫を行っています。これは生活の日常の中でユニクロのアプリ利用を想起させる工夫といえます。
店舗内では、購入アクションをひと押しするような、自分のサイズを記録できる機能や、スタイリングのお気に入り、在庫の検索ができるアプリ機能を豊富に提供しています。
ユーザーの購買動機は日常生活の様々なタイミングで発生します。そのタイミングを逃さないために、企業が提供するコミュニケーションツール(アプリやマイページ等)を登録していただく必要がありますが、その際に重要なのは、「ユーザーが企業とコミュニケーションを日常生活で行うことのわかりやすいメリット」を事前に提示し、それらのコミュニケーションツールを利用することのユーザーにとっての必然性をまずはしっかりと伝えていくことが重要といえます。
最後に
本コラムでは第1回から第5回にわたり、企業のオウンドメディアの「ブランド価値貢献度」を向上させるために取り組むべき5つのポイントについて見てきました。それらの取り組みの全体像は下図のように表すことができます。
「ブランド価値貢献度」を高めることで、企業のデジタル活動における「情報価値(「閲覧価値」+「行動価値」)」の部分が向上させることができる可能性が高まります。これらのユーザーの接触から購買後のロイヤルティに関する各効果のファネルの中において重要となる5つの指標について、しっかりと認識し施策に取り組むことで、最終的には企業のデジタルマーケティング活動全体の価値でもある「Webサイト価値」の向上を実現していくことができるでしょう。
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